仙台文学館

ことばの
杜を
あるこう

2024.4.26(金)
窓をあければ何があるのであらう くもりガラスに夕やけが映つてゐる/尾形亀之助 恋愛後記

二代館長 小池光について

宮城県の船岡町(現・柴田町)出身の小池光は、歴史小説家で直木賞作家の父・大池唯雄を父に持ち、東北大学大学院理学部研究科在学中から短歌の道にすすみました。以後、高校教諭としての仕事の傍ら、歌人としての活動を続け、平成19(2007)年4月に仙台文学館の館長に就任しました。以後、13年間にわたり、講座や講演会、企画展の監修や執筆など館長としての職務を通じて、来館者の方々との交流を深めました。


○短歌講座(平成19(2007)年から令和2(2020)年まで、全119回開催)

毎回、決められた「題」にもとづいて、参加者が一首作品を提出し、小池館長が講評を行いました。毎回定員を超える応募が寄せられる人気の講座で、会場は熱心な参加者の熱気があふれていました。また、毎年度末には、『小池光短歌講座記録集』を作成しました。

○小池光ことばのセッション(平成19(2007)年から令和元(2019)年まで、全10回開催)

井上ひさしを皮切りに、野家啓一、三浦雅士、和田誠、穂村弘、鷲田清一など、文学者のみならず各界で活躍する方々をお迎えし、様々な角度からお話を伺いました。

○ことばの祭典

短歌・俳句・川柳の三部門が、当日出される共通の題で作品を詠む「ことばの祭典」。館長就任後は、「小池光館長賞」として、館長自身が三部門から一つずつ作品を選び、賞を贈呈しました。

また、そのほか、井上ひさし・太宰治・正岡子規・石川啄木・北杜夫・斎藤茂吉を取り上げた特別展では、図録への執筆や、講演会、対談などを行ったほか、広報誌『仙台文学館ニュース』(年2回発行)の巻末コラム「気になる日本語」の執筆も行うなど、館長として、13年間にわたって様々な方面で力を尽くしました。

なお、令和2年(2020)度も小池光短歌講座は継続して開催予定です。


koike
仙台文学館に、ようこそおいでくださいました

仙台は土井晩翠、島崎藤村、魯迅をはじめとする多くの近代文学の担い手が生まれ、育ち、あるいは生涯の重要な時期に通過した場所であり、独特の文学的風土を持っています。その全体像を俯瞰するとき、多彩さと豊かさ、故郷に対する思いのふかさをあらためて実感することができます。そしてまた近年では、若くすぐれた、現代を代表するような文学者たちがここを拠点としさまざまな活動をみせています。これはかつての仙台にはなかった現象といえます。

当館の初代館長である、劇作家・小説家井上ひさしの豊饒な作品世界が仙台・東北を根底にもつのであるのはいうまでもありません。佐伯一麦をはじめ次世代の有力な作家たちがこれほどならぶ都市もそう多くはありません。そしてその背景には島崎藤村、土井晩翠以来の文学の、詩歌の伝統の蓄積があります。仙台文学館では、これまで展開してきた、こうした仙台の歴史的水脈と今日の文学都市仙台の息吹の両方を意識した様々な展示や講座などを、これからも継続していきたいと考えています。

そして、これからの文学館に求められるもう一つの大きな役割は、人間が生きていくために必要なものとしての「文学・芸術」を考えるような場所であることだと思います。東日本大震災という大きな出来事を経て、文学や言葉の力について、その無力さも含めて、いろいろな意味で考える動きが生まれてきました。

人間の生き方に直結する切実な言葉をどう生み出すか、そうした言葉に触れるためにはどうしたらいいのか、そのことをそれぞれにふかく意識できるような場所にしていきたいと思っています。

仙台文学館 館長

小池光